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出版後のザ・ロング・アンド・ワインディング・ロードについて
B赤っ恥 2004年9月末に書店に並んだ拙著。苦戦はしていたものの、まったくの無風状態ではなかった。「奈良新聞」の書評を皮切りに、「中國新聞」「日刊ゲンダイ」、そして、年末には地元「神戸新聞」「朝日新聞(兵庫県版)」と徐々に紹介されていった。特に「日本カメラ」では1ページのインタビューという格段の扱いとなった。
仕事場のビルが同じBさんは、拙著を大いに気に入ってくれ、読み終わった後、さらに3冊追加注文くれた。
2004年もあと数日で終わりというある日、仕事場のビルで恒例の年末親睦会が開かれた。20人ほどの人が集まっているその場で、Bさんは大声で、
「中野さん、この前、御本、出されたんですよ〜」。
朝日新聞の県内版は記事も大きく、カラーの顔写真も載ったので、出版に気づいている人もいるのでは、と少しは覚悟はしていたが……。
Bさんが、拙著実物を見せる。みんなが「ほぉ〜」と波の如く本の回りに集まってくる。
こうなってしまった以上は「売るしかない!」と開き直りを決めた。
集まってきた人の第一声は思った通り、
「自費出版ですか?」。
写文集で、難しい写真はない。ちょっと手にとってパラパラとめくれば「ある程度、写真に関心のある人なら、この本に興味を持ってもらえる」と思ったが、みんなの心は、同じビルで働く人間の創作作品を「見てみよう」「評価してみよう」なんてものでないことは、すぐに感じとれた。
Bさんは、続けて、
「1冊3150円です。応援してあげてください〜。お申し込みは中野さんのところまで〜」。
Bさんが悪気があって、そんなことを言っているのでないことは百も承知だ。
しかし、Bさんが値段を言った途端、「このままいたら買わされる!」と思ったのだろう、一気に波は引いた。(波の引き方は、悲しいほど、おもしろかった!)。そして、何事もなかったかのように本来の親睦会の話題に戻っていった。
親睦会の後で、本を買いに来た人は、もちろん1人もいない。「本を見てみたい」「どんな本ですか」と声をかけてきた人もいない。
現実とは、そんなもんなのです。